外壁の色見本
家を建てていて、外壁の色を決める段階に入った。やり方としては、いくつかのサンプルから選ぶ形だった。
白にしようと思って見本を見たとき、最初に戸惑ったのは、白がひとつではなかったことだ。白の中にも種類があって、たとえば黒い粒が混ざっている白がある。ぱっと見た印象だと、わざわざ粒を入れる理由がわからない。白は白でいいはずで、粒は無駄に見えた。
その時点では、粒のない白のほうが素直で、きれいで、選びやすいと思っていた。
散歩で壁を見た
その話をした後に、散歩のついでに周りの家の外壁を眺めた。自分の家の外壁を想像しながら、実物を見てみようと思っただけだったけれど、そこで少し気がついた。
粒のない、いわゆる真っ白に見える外壁が、思っていたより目についた。そして、目についた理由は「白だから」ではなくて、なぜか落ち着かないからだった。きれいなはずなのに、どこかで引っかかる。
その引っかかりを言葉にしようとすると、外壁の素材との組み合わせが関係している気がした。
単色が合う素材と、合わない素材
外壁には、石に近い質感のものや、凹凸や粒立ちがあるものがある。そういう表面に、均一な白が乗っていると、塗装したことが前に出る。表面の情報量に対して、色が均一すぎて、そこだけが浮く。
一方で、ガルバリウム鋼板のように、表面がすっきりしていて素材自体が均一なものだと、単色でも違和感が少ない。色が均一でも、素材の性格と揃っているので、塗装が目立ちにくい。
同じ白でも、素材によって見え方が変わる。頭では当たり前の話なのに、サンプルを眺めているときは、白を白としてしか見ていなかった。
粒の入った白を見直した
そこで、黒い粒が入った白のことを思い出した。粒が入った壁を実際に見てみると、遠目には白い壁として認識できる。白い家だな、という距離感は保たれている。
でも近づくと、粒が見える。均一ではなく、細かな色の揺れがある。その揺れが、凹凸のある素材と噛み合う。表面の情報量と色の情報量が同じ方向を向くので、塗装が強く主張しない。
サンプルの時点では、粒は余計な装飾に見えていた。実物の壁として見たとき、粒は装飾というより、素材の質感に合わせるための調整に近かった。白を白として成立させるために、あえて均一にしない、という選択肢があることに、その場でやっと納得した。
影を黒で塗った話
こういう話をしていると、昔のことを思い出した。絵を描いていた頃、影を黒で塗ったら怒られたことがある。影は黒だと思い込んでいて、影の部分を黒く塗ればそれらしくなると考えていた。
でも実際の影は、黒そのものではない。周りの色や反射の影響を受けていて、黒い気がするだけで、そこにある色はもっと別のものだった。黒という記号で処理すると、途端に嘘っぽくなる。言われてみればそうで、当時はそれが新鮮だった。
今回の外壁も、似たところがある。白を選ぶと言っても、単に白を置けばいいわけではない。外壁の素材が持っている情報と、白の出方がどう重なるかで、見え方が変わる。見本を机の上で見ていたときは、白というラベルだけで判断していた。散歩しながら壁を見た途端に、そのラベルが役に立たなくなった。
まだ色は決めきれていない。ただ、粒のある白を見たあとで街の壁を見ると、前よりも「白」の中身を見るようになった。白は白、で止めてしまうと見落とすものがある、という程度の話だけれど、家づくりの途中でこういう感覚が挟まるのは、思っていたより面白い。